タンポ(パッド)の素材が異なると音色は異なるか?
新素材タンポを装着したフルート、出品中です

フルート修理に使われるタンポですが、その心材が硬いと硬めの音になり、

柔らかいと柔らかな音がすると言う人がいます。これは本当でしょうか。

従来のタンポの心材はフェルトですが、フェルトにも種類があります。

柔らかなフェルトは調整しやすい反面、トーンホール先端に当たる部分の

フェルト繊維は周辺に移動してくるため、比較的早期に鳴りが悪くなってきます

音が柔らかい、温かいといわれるフルートはこのようなフェルト製のタンポを

使った場合が多いようです。

ところで、タンポの柔らかさだけなら、フェルトより柔らかい新素材が開発されて

おります。ですから、タンポの素材と、その柔らかさが本当に音色に

影響するのか考えておくのは良いことです。

なぜなら、先入観から本当に良いものを得損なう可能性があるからです。

後半で、伝統的なフェルトタンポ装着のフルート(洋銀製)を吹く
モイーズ

多くの場合新素材タンポ装着のフルート(洋銀・総銀・金・プラチナ製)を吹く

ゴールウェイの演奏をご紹介します。

では、タンポの素材と音色の関係を探っていきましょう。

まず、取り上げるのは、心材を覆うフィッシュスキンです。

2 音質に貢献する−フィッシュスキン

フィッシュスキンはタンポを覆うスキンの代名詞になっていますが、

今日使用されるスキンは魚からではなく、羊、豚、牛などのからとられます。

以後、スキンで統一します。

タンポ職人の多くは、大きなスキンをとれることから豚や牛の材料を好んで

用いますが、

スキンの平面性、均質性の面で羊腸スキンに勝るものはありません。

ところで、フェルトをスキンで包んだ伝統的なフェルトタンポですが、

スキンを貼らないと音はどうなるのでしょうか?

スキンを貼らないフェルトタンポ−音は出る?

スキンが多少破れたタンポは何とかそれなりに音は出ます。

しかし、タンポにスキンを貼らないと、音は出ないのです。

何と、うんともすんとも反応しなくなるのです。なぜでしょうか?

フェルトは防振、防音に使われる素材で、

繊維の中には無数の中空構造となっているので、

見事に音を遮断してしまうからです。

フェルト製タンポにスキンを貼って始めて音が出るわけですので、

フェルトそのものは音色とは無関係
であることは明らかです。

フェルトは音穴に対するクッション材にすぎません。

では、新素材タンポの場合はどうですか。

スキンを貼らない新素材タンポ−音は出る?

スキンを貼らない今注目の新素材タンポも音は出ないのでしょうか?

実は、新素材タンポの場合は、スキン無しでも音はでます

新素材タンポもフェルトと同じく防振性がありますが、

密閉性
(空気を通さない)があるので、それなりに音が出るのです。

ですから新素材タンポはスキンを貼ると、さらに大きな音が出る のです。

このことから、タンポの素材(心材)に関してどんな結論を引き出せますか。

5 フルート独特の音を引き出す−スキン

ですから、このスキンこそがフルート独特の音色に貢献することが分かります。

スキンと音色の関係ですか?そうです。

たとえば、サックスにはやぎの皮太鼓には牛革などが用いられ、

共鳴体と密接に絡んでそこから独特な音が生み出されます。

ところで、天然ですので、スキンには無数の微少な穴があり、

フェルト繊維のすきまと相まって、スキンを貼ったフェルトタンポの場合、

響き(振動)の一部ロスします。

では、スキンを貼った新素材タンポの場合はどうですか?

新素材に羊腸スキンを貼ったタンポの音量?

スキン無しでも鳴る新素材タンポですが、プラススキンの効果は何ですか?

スキンからのわずかな振動漏れがほぼないので、フェルトタンポとくらべると、

新素材タンポから生み出される響きのほうが底力がある と断言できます。

では、音色はどうですか?

柔らかくて暖かな響きはそのままですが、

響きがロスしない分、強い響きが得られます。

この響きの強さや余韻、音量が増すことなどは、広い見方でとらえると音色の相違(※)

として解釈することもできますが、

実質的には曲を表現する上での潜在能力が向上したということもできます。

※ グランドピアノで演奏されるラ・カンパネラは、巨匠が演奏すると、

「音色は色彩に富む」とか、「多彩な色彩」などと表現されることがありますが、

実質的には音の時間的要素と音の大きさ(= 絶妙なタッチと音量 )

が織りなす産物にすぎません。

ですから、同じスキンを貼ったタンポならフェルトタンポにせよ、

新素材タンポにせよ、フルート独特の柔らかくて暖かな響きの点では同じです。

両者の相違は何ですか?

振動漏れの少ない新素材タンポから繰り出される響きには、

フェルトタンポのそれよりも底力があり、

音量または響きの強さが優れていると断言できます。

その音は、

→→遠くまで響き(遠鳴り)、呼吸が楽になり、

大きなフレーズを豊かに演奏
できます。

柔らかく温かい響き 、二通りの見方

@柔らかく暖かな響きは管体 の材質スキンが織り成す産物です。

Aところで、調整の度合いが低いときに感じる柔らかな響きも存在するのです。

フルートは、通常2度、3度と調整を重ねて鳴りの質を改善していきますが、

1度調整
しただけのフルートは、音穴との密閉性が不十分で音量が弱く

ぼーっとした音になるので、柔らかい音色に感じるのです。

これは響きの弱さに起因する柔らかさです。参照

一方、調整を重ねたフルートは、独特な柔らかな音色で、
音量があり音には

調整状態が向上するにつれて、音には
明確な輪郭
がでてきます。

そうです、シャーリングのない、ピュアな音が得られるわけです。

ですから、タンポの密閉性を高めたフルートは、

フェルトタンポであれ、

新素材タンポであれ、

響きの弱さから来る柔らかではなく、

フルート独特の音色の柔らかさ
と、音量があり、明確な音の輪郭があるのです。

両者の違いは、その音色が
遠くまで届くかどうかということでしょう。

天然のスキンを貼った新素材タンポ−時代を超えた新素材

音穴に対する密閉性の面で、フェルトタンポに勝る新素材タンポは、

以下のような様々な特長があります。


@フルート独特の柔らかな音に、明確な輪郭がある。

A密閉性が良い分、音は大きく遠くまで響く

B遠くまで響くので、呼吸が楽になる。

C呼吸が楽なので、大きなフレーズを豊かに演奏できる

D密閉性がいいので、シャーリングがない

(雑音は吹き方よりも不十分なタンポ調整に起因する)

Eシャーリングがないてので、レガートがきれい

Fバネ圧をソフトにできるので、フィンガリングが楽になる。

G最大音量が大きい分だけ強弱・曲想をつけやすい

H特に洋銀のフルートの場合、吹き方を工夫して弱めに吹くと銀的な音

強く吹くと金的な音を生み出すなど、

訓練次第で音色のパレットを広げることができる

様々な貴金属製のフルート16本を吹き比べた現代の巨匠ゴールウェイ

演奏を聴いて、皆さんはどのように思われますか。ゴールウェイ

洋銀、総銀、金、プラチナなどの素材と、それが生み出す音色ですが、

目を閉じて聴いて素材の違いを判別できるでしょうか。ゴールウェイ

2番目-ムラマツの頭部管銀製・管体洋銀製です。(59秒からスタート)。

聴きながらマウスカーソルを15番目(6分17秒)のところに当てて

音色を比較する準備しておきましょう。

また、以下も含めて演奏のスタート時間をメモしておきましょう。


15番目-ムラマツ24金製フルート。(6分17秒からスタート)

16番目-ムラマツ24金製フルー
ト。(6分41秒からスタート)。

聴きながらマウスカーソルを2番目(59秒)のところに当てて

音色を比較する準備をしておきましょう。


★何度も何度も比較して聴いて見てください。

上記3つのムラマツフルートのうち、どの素材のフルートがお好きですか。

比較してみると興味深いですね。

輝かしい音色
はどのフルートから発せられていますか。

★メーカーに媚びることをしなかったモイーズの偉大さが分かるような、

そんな結果に驚かされたのではないでしょうか。

何度も何度も聴き比べてみましょう。

音量がありそうなのはどのフルートに思われますか。

どちらが遠鳴りしそうですか。

いずれにしても、奏者は素材に関わらず、

自分好みの音色を奏でることがわかりますね。もう一度聴いてみましょう。

ゴールウェイ

20世紀の巨匠マルセル・モイーズは、「洋銀製フルート

最も音色の多様性がある」と語り、

生涯洋銀性フルート(頭部管銀製)を吹き続けました。

→ H参照。 モイーズ

この興味深い考察から、当工房が、価格が安い洋銀製フルートをお勧めしている

理由がお分かりいただけたでしょうか。

当方は、新素材タンポ装着の洋銀製フルート、

特にヤマハ200〜300シリーズを心からお勧めいたします。

★ヤマハのCY管とEC管の両方を試奏してもらって

好みをお聞きしたところ、何と、

CY管を選ぶ人の方が多かったということを付け加えておきます。

なお、新素材タンポは当フルート工房レスポンスが開発した

オリジナルタンポです。


元ムラマツタンポ調整職人

専門で調整修理を行ったことのないフルート奏者・愛好家は、

タンポの素材・調整の度合いと鳴りの関係
が分かりにくいかもしれません。

ですから、上記コメントは、

さまざまな素朴な質問に対する答えを提供できれば考えて、

プロのフルート調整職人の立場から書かせていただきました。

また、以下の点もこれらのコメントの動機となっています。

顔の見えないネットの世界では、

憶測に基づく意見など客観性のないものが多々見受けられます。

たとえば、新素材タンポになると高温で膨張し、

には湿気で変形するので、音が出にくくなる、

とのコメントありました。本当でしょうか?

しかし、実際は、当方独自の新素材

耐熱約200°


耐寒マイナス50°
、で安定性が長所なのです。

さらに新素材タンポは吸水性は何とわずか1%ですから、

湿気で膨らんでくるフェルトタンポより高性能です。

新素材タンポの問題点は、製品化までに18工程もかかり、

材料費はフェルトの何倍もする、

微調整がフェルトタンポのそれよりもはるかに難しいということくらいです。


終わりまで読んでくださりありがとうございました。

新素材タンポで調整したフルート、あります。



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新素材の 「レスポンスパッド」は 商標登録済みです